1.管理職研修とは
管理職研修とは、管理職(マネジャー)が事業・組織で求められる成果創出(目標達成)ができるようにマネジメント力を確実に定着するためのトレーニングプログラムです。
一般メンバー職から管理職に昇進すると、会社ごと求められる役割があり、その職責を果たすために必要なスキルや知識を磨くことが必要になります。
管理職研修は、組織マネジメント、問題解決、戦略的思考、コミュニケーション、チーミング、モチベーション、対話などのスキルの向上を促進し、組織全体が継続的に成果が出せるようにすることを目指しています。
2.管理職研修の種類
2ー1.新任管理職研修
新任管理職研修は、メンバー職から管理職に昇格した人向けに行われる研修です。
メンバーの時はプレイングが中心で自分の成果(目標達成)に責任がありますが、管理職になるとチーム・グループ・課(組織)の成果(目標達成)に責任を持つことになります。
組織成果を出すためには、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決、モチベーションといった知識、スキル、意識・姿勢を持っていないと責務を果たすのが難しくなりますので、これらのマネジメントスキルを獲得し、現場の実践で使えるようにするのが研修の目的です。
現場の1(いち)プレイヤーであるメンバー職から、新任管理職になると組織チームに求められる行動が取れるようになるには大きなギャップがあるものですので、この差を埋めることが研修の第一の目的になります。
言い換えれば、管理職に求められる要件となる、
「自分で業績を作る(業績責任を果たす)」、のではなく、「チームメンバーの育成を通じて業績責任を果たす」ことに他なりません。
2ー2..課長研修
課長研修は、マネジメント力を高めることを目的にリーダーシップやコミュニケーション、問題解決、チームビルディング、モチベーション、1on1ミーティングのスキルの理解獲得と組織の現場で使えるようにする実践的なトレーニングのことをいいます。
組織で求められる成果創出(目標達成)が継続してスムーズにできるようにすることはもちろん、そのために部下の育成や業績評価、チームの生産性が高まるようにスキルを強化し組織戦略の遂行ができるようにすることが研修プログラムに組み込まれます。
新任管理職研修と課長研修の違いについては、新任管理職研修ではメンバー職から、管理職への意識・姿勢のギャップを埋めること、管理職に求められる行動の認識を埋めることに重きが置かれます。
一方、課長研修ではより現場実践に即して、日々のマネジメント現場で起こっているメンバー育成や、顧客、組織、チーム内の問題対処のあれこれ、目標達成の阻害要因が発生しないようにするといった、すぐに正解が見つかりにくいことに焦点が当てられます。
詳しくは下記記事で解説していますので合わせてお読みください。
» 課長研修とは?丨課長研修に必要な内容・目的・進め方
2ー3..部長研修
部長研修は、組織の上級管理職向けに、事業や組織ビジョン策定や戦略の次の一手をよりレベル高く実行できるようにリーダーシップ、マネジメント力を高める研修になります。
リーダーシップスキルを高めながら、事業をルーティンで回すことなくマーケットの環境や顧客ニーズの変化をいち早く嗅ぎ取りながら、変革の推進が果たせるようになること。
また、経営や部署間とのより高度な連携のもと、事業の生産性を高められるようにできること。
これらを含めた事業戦略、組織全体のゴールを設定し、戦略的リーダーシップを発展できるように部長研修プログラムが組み立てられるのです。
課長研修と部長研修の違いについて、課長研修では短期の業績責任を果たすためのマネジメント力の向上や、そのために必要なメンバーの育成に焦点が当てられます。
一方、部長研修では中長期に向けた業績作り、そのために経営戦略や事業戦略、組織戦略を俯瞰的に捉え、マーケットの動向、顧客価値を最大化できるように視野を高められるプログラムになります。
詳しくは下記記事で解説していますので合わせてお読みください。
» 部長研修とは?丨部長研修の目的と内容、テーマと進め方
3.管理職研修におすすめの内容・ネタ
管理職研修の内容、ネタは現場に即したケーススタディやロールプレイでスキル向上が獲得できるようにします。
具体的には、大別すると3つの内容、合計12項目があります。
- 1.「示すこと」=リーダーシップ、ビジョンメイク
- 2.「作り込むこと」=戦略、戦術、変化・イノベーション、チームビルディング
- 3.「巻き込んでいくこと」=人材育成、コミュニケーション、評価、モチベーション、サポート
→→→ いわば「示し」「作り込み」「巻き込んでいく」知識、スキルを高めるのが研修の内容になるのです。
3−1. 「示す」=リーダーシップ、ビジョンメイクのネタ
経営や上司から言われるまま実行するメンバーとは立場が違い、管理職は、組織・チームのビジョン・目的・ゴールを示していくことが求められます。
リーダーシップはゴールを指し示しメンバーの方向を揃え成果を出していくこと。
ビジョンメイクは組織、チームのゴールについて、数値定量とともに、定性的な状態、つまり組織やチームが結果としてどうなっているのか。個人がそこで何が得られるのかを言葉で表すことです。
これら目的地、ゴールがないと、どこに向いて組織やチームが動いていくかまったくわかりません。
上司の言葉でなく、管理職が自分のことばで示すことができるのか。非常に重要なのです。
詳しくはこちらの関連記事合わせてお読みください。
» 参考:「示すこと」
3−2. 「作り込み」=戦略、戦術、変化・イノベーション、チームビルディングのネタ
ゴールを作ったとしても、実行には設計と計画が必要です。マーケット、顧客の事情や競合の出方によって、自社のアセットによって考えておくことが必要です。
戦略は事業や組織にとっての実行する上での設計図。手段や行動についてを指します。
戦術は戦略の一部を成していて、戦略をよりブレイクダウンした具体的な行動や手順についてをいいます。
自社のリソースである人材、資金、情報をどのように優先づけて配分し、プロセスをどのように設計するといった設計図になります。
変化・イノベーションは、また新しい価値の創出が求められていること、また変化し続けるマーケット・顧客のニーズに合わせるため、方向性やプロセス、戦略・戦術の見直しを図ることをいいます。
チームビルディングは、共有の目標に向けてチーム・組織内の信頼関係の構築、コミュニケーションの強化、個々の強み活用、役割配分といった、効果的に組織が成果を作り上げられるようにするプロセスにあたります。
詳しくはこちらの関連記事合わせてお読みください。
» 参考:管理職研修のネタを「作り込む」
3−3. 「巻き込んでいく」=人材育成、コミュニケーション、評価、モチベーション、サポートのネタ
ゴール設定、戦略、戦術の仕込みができたとしても、それはあくまで「絵」までのこと。シナリオ、筋書きができたとしても人材がついてこないと、うまくいくものもいきません。
人材育成については、部下が人の成長を通して目標が達成できるようにすること。部下ができないことは上司の管理職が人材育成を果たしていないということ。そうならないように人材育成の考え方です。
コミュニケーションは、チーム内で考慮しておかないといけない原理原則になります。管理職の組織内であるべきコミュニケーションのこと。ゴール、プロセス、傾聴、フィードバックのこと。
評価とは、目標設定を含めたメンバーの業績を評価するプロセスのこと。
目標をどうするのか。そのためいどう行動するのか、いつ、どこまでやるのか。達成度や仕事のレベル、行動の基準のことになります。
モチベーションは動機づけや目的意識に関わることですので、無視するとあとでしっぺ返しを喰らいます。
部下はロボットでもマシンでもありません。気持ちと感情、価値観、志向を持った人です。
うまく引き出してあげると仕事の本気度が変わって成果につながるのです。
サポートは自身の関わり。メンバーを放っておくのではなく、ティーチング、コーチング、フィードバックを入れて部下の力を最大限に引き出す管理職自身の関わりについてです。
詳しくはこちらの関連記事合わせてお読みください。
» 参考:「巻き込む」
4.管理職研修の進め方
参加対象者、自社の置かれた環境、組織の成長ステージに合わせ、何を大切に、なぜするのかを明確にすることと。
そこから個々のニーズに応じた研修プログラムを組み立て、 現場ですぐにでも使えるような実践型、研修後のフィードバックを考慮に入れた長期的なサポート支援がポイントになります。
4−1. 課長研修の進め方
スケジュールの調整や事前の準備、研修、そして事後のフォローアップも重要ですが、何よりも全体の設計が肝要です。
リーダーシップやマネジメント、それに必要なコミュニケーションスキルを高め、現場で実践できる力を養う仕組みが求められます。
その上で重要なのは、企業の進む方向を踏まえて課題に焦点を当てた内容にすること。現場の成長度合い(メンバーレベル、組織レベル)に合わせた構築が必要です。
さらに、研修後に現場でうまく応用できるかどうか、定期的なフォローアップの設計が肝心です。
これらの概念や考え方を身につけ、現場で実践でき、かつ自己改善が可能な状態にすることが、課長研修の進め方として意識をしておきたいことです。
詳しくはこちらの関連記事合わせてお読みください。
» 参考:課長研修の進め方
4−2. 部長研修の進め方
部長研修では、課長研修同様にスケジュール調整や事前の準備、研修、そして事後のフォローアップが重要ですが、何よりも全体の設計が求められます。
部長対象なので、より経営に近い立場に特有の事柄、戦略的な事業ビジョンやそれを達成する組織ビジョン、意思決定と判断軸、変革のリーダーシップについて高度な思考を促進し、実践的な適用を図ります。
そして、単なる短期的な視点からの脱却を図るために、1年から3年先の事業や組織の実践行動を計画的に構築します。
長期的なモニタリングが必要なので、その後の定期的なフォローアップも重要です。目標の設定と評価の組み込みがあると良いでしょう。
これらの概念と考え方を習得し、現場で適用し実践可能にすること、そして自己改善の能力を養うことが研修の焦点です。
詳しくはこちらの関連記事合わせてお読みください。
» 参考:部長研修の進め方
5.管理職研修に関する疑問と答え
5−1.管理職研修は意味がない?ムダなのか?
管理職研修に対する「意味がない」「ムダだ」という声や疑問を耳にすることがありますが、これらの意見についてです。
通常の教科書的なアプローチでは確かに物足りないことがありますが、適切に計画し実施することで非常に有益なものになります。
有益な管理職研修のポイントを紹介します。
まず、研修の目的を明確に定義することが重要です。研修がなぜ必要なのか、組織がどの状態にあるかを考慮します。
期待する成果を具体的に定義することで、参加者と研修担当者が共通の目標に向かって協力しやすくなります。
さらに、参加者の個別の課題感やニーズを把握することも大切です。
管理職は所属の組織、チームやメンバーの置かれた状況によって、また異なるバックグラウンドやスキルを持つため、個別のニーズに合わせた研修を提供することが効果的です。
実践的な内容やシミュレーション演習も有益で、理論だけでなく具体的なケースや課題に対処する力を育むことができます。
継続的なフォローアップも重要です。
研修後のサポートやフィードバックを通じて、学んだことを実践に移すサイクルを確立します。
そして、研修の効果を評価し、改善する文化を築くことも欠かせません。参加者からの意見を受け入れ、研修プログラムを進化させることで、より効果的な研修が可能です。
「意味がない」「ムダだ」は、参加対象者がボロを見せたくないから参加したくない、自分の意見を邪魔されたくないといったことを隠す理由づけの言葉になっているのかも知れません。
詳しくはこちらの関連記事合わせてお読みください。
» 管理職研修は意味がない?ムダ?|原因と対策
5−2..管理職研修を進める上での注意点は?
管理職研修を進める上での注意点はさまざまな観点があります。
成功に導くためには以下のポイントに重点を置くことが重要です。
まず、段取りとスケジュールの適切な計画が不可欠です。
事前に研修の目的やゴールを明確に定義し、そのための内容参加者のスケジュールに合わせた段階的な進行計画を立てるのがいいでしょう。
部長や課長は忙しいもの、突発的な現場のトラブルに見舞われることは想定し、予期せぬことにも備えて柔軟性を持った計画が達成度を高めます。
コンセンサスの形成も重要な要素です。
参加者が研修の目標や方針に共感し、協力することで、学習効果が向上します。
事前にコミュニケーションを重ね、期待や懸念を共有し合い、全体で一丸となった雰囲気を醸成しましょう。
もちろん送り出す管理職のその上司の方への合意形成も取っておくことが望まれます。
一方で、個別の事情への配慮も欠かせません。
管理職のチームや組織のメンバーはさまざま。置かれたマーケット環境は変化が続きます。
個々の参加者が抱える課題やニーズを理解し、個別のサポートを提供することで、研修の効果を最大化できます。
さらに全体の方針やビジョンに対する理解を深める機会を設けることも重要です。組織の目指す方向性や価値観に共感し、それを具体的な行動に移せるようにサポートします。
総じて、管理職研修を成功に導くためには、計画の徹底と柔軟性、コンセンサスの形成、個別の事情への対応、全体の方針への共感、そして持続的なフォローアップの確保が欠かせません。
これらの要素を組み合わせ、研修を有意義なものに仕上げることが注意点となるのです。
6. 管理職研修の効果を最大限に高める「継続的なコーチング」
管理職研修をムダにせず、事業の最大の効果を引き出すためには継続的なフォローアップが重要になります。
その実現のためにプロによるコーチングが非常に有益でだとお伝えさせてください。
研修後のフォローアップにおいて、コーチングは参加者が学んだスキルや知識を実際の業務にどのように活かすかをサポートする役割を果たします。
研修で得た理論を実践に移す際には、具体的なケースや個々の課題に対してどう実践に落としていくのか。
個々の特殊性を汲んだ上でしかも参加対象者のレベルに配慮しつつ、MUSTでなく自分から進んでやりたくなるようWAN・動機付けができること。
これらの期待はプロによるコーチングによる支援・伴走が効果的なのです。
またコーチングを受けることで新たな発見が生まれます。
自己解像度が高まり、研修で得た以上のリーダーシップスタイルのバージョンアップ、新たなアプローチの模索などが可能となり、管理職がより成長する一助となります。
参加対象者の個別の事情を汲んでくれるという点も大きなメリットです。
いわゆる法人企業向けコーチングで組織全体での成果を最大化できるでしょう。
マーケット事情の特殊性、顧客ニーズの変化、また企業内での部署感の状況やメンバーの成長度合い、組織構成、人材育成ニーズに合わせて柔軟に対応することができます。
参加者が直面する実際の問題に焦点を当てて複雑に絡まった思考を紐解きながら整理クリアにして、次に向けた有効な一手となる自己解像度を高め、意欲高く望めるようにすることで業績貢献につなげてもらうのです。
継続的なプロによるコーチングは、管理職研修の延長線上であり、研修で身につけたスキルを長期間にわたって発展させ、持続可能なリーダーシップ力を築くための重要なステップと言えます。
組織にとっても従業員の成長と結びついたリターンが期待できるため、積極的な導入が推奨されているのです。
管理職研修を有意義なものにしたいとお考えの方は下記ページ「法人向けコーチング」をご覧ください。