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リテンションとは?意味・メリットからリテンションを高める施策まで解説

人事領で使われるリテンションとは、「従業員にできるだけ長い間はたらいてもらう」打ち手全般を指します。

経営にとって人材の確保は今や事業の根幹をなす課題。採用しては辞める、を繰り返している企業は、いくら伸びる業界で、ビジネスモデルが秀逸であっても、この先継続的に売上・利益を出し続けていくことは難易度が高いと言わざるを得ません。

事業を推進していく上で「人」がいて「長期にわたって」「事業貢献」してくれること。その実現に向けて企業はリテンションに目を向け、リテンションに効果が高いと言われている1on1ミーティングに注目しているのです。

マネジネントを強化し、業績を引っ張っていく鍵。上司と部下の対話の時間、1on1はリテンションに極めて相性がいいのです。

目次

1.リテンションとは

1ー1.リテンションの意味

リテンションとは、英語で「保有, 保存, 保持、維持」といった意味があります。人事の領域では「人材を採用し長く勤めてもらう(=維持)施策」のことを指しています。

新卒採用では3年で3分の1が辞めてしまい、中途採用に目を向けても、若手労働者の絶対数の減少、団塊世代の大量退職もあって、採用環境が企業側には非常に厳しくなっています。

そんな背景もあって、人事は採用した人材にはより長く勤めてもらい、事業に貢献をしてもらうようにする。そのために報酬やキャリアについて、またモチベーションを高めるために、個人に合った丁寧なリテンション戦略を組むことが求められています。

経営のテーマは人材のリテンションマネジメントそのもの、その取り組みが業績に直結するのです。

1ー2.リテンションが注目される背景と事情

VUCA(ブーカ)の昨今とよく言われますが、経営は今、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)に直面しています。

よって、従来の成功パターンでは将来は見通せず、過去の成功体験にしがみつくことは逆にリスクとさえなっています。またこのVUCAは、個人のキャリアでも同じことが言え、せっかく採用し活躍している人材が外に出て行くリスクもあるのです。

人材マーケットに目を向けると大きな流れでは、少子化による人材不足、大量退職時代、頻繁になりつつある離職市場。会社と優秀な人材が良好な関係を保ち、人に長く働いてもらうかは人事の最大のテーマになっているのです。

1ー3.リテンションと採用

今や新卒採用、中途採用とも、企業は苦戦を強いられています。人事は膨大な時間をかけて採用活動をしなければならず、新卒採用であればインターンシップ、リクルーター、説明会、選考、HP、パンフレットと年柄年中業務と向き合い、学生から内定承諾を得ている状態。

中途領域では、採用倍率が10倍を超える職種もあって、人材に出会うことはもちろん、面接までこぎつけることもままなりません。

口説いてせっかく内定を出したとしても、他社へ逃げられるという状況で、採用計画通りにいくことは極めて難しいのです。

ミスマッチもあって、入社して1年も経たないうちに辞めてしまうことも少なくありません。せっかく時間と採用コスト(媒体費、紹介費)をかけたとしても、優秀な人材を確保し続けることは難易度が非常に高いを言わざるを得ません。

優秀な人材は一度採用したら決して辞めさせないこと。「うちに合う人だけ残ればいい」ではなく、「人材を優秀な人材に育て決して辞めさせない」そんなリテンションが求められています。

2.リテンションの目的

2ー1.リテンションは業績向上になる

リテンションの大きな目的は、経営課題に直結する人材の長期確保、その結果業績の向上にあります。離職者が多い職場では、技術・スキルの伝承が途絶え、また、経験値のストックも減ることで、企業の優位性や、ベストプラクティスが途絶えてしまうことが想定されるのです。

新卒採用で4、5年目でやっと一人前になって、ここから事業への貢献をしてくれるタイミング。それくらいに辞められてしまっては、時間とコスト、人材への投資回収どころではありません。

また一からとなると組織へのネガティブなストレスも発生しかねません。リテンションによって企業成功のナレッジを確保する。また個人にとどめておくだけなく、広く組織へ展開してこそ意味があるのです。

2ー2.リテンションは生産性向上に効く

働き方改革とセットで語られる、生産性の向上。企業にとって人材採用の環境が厳しい中、従業員一人一人の生産性の向上は、もはや避けられないテーマになっています。

人は、毎年同じことをしても確実に生産性は上がってきます。意識しなくても対前年比105ー110%くらいの業績貢献は実現できるのです。また、個人に蓄積されたノウハウやスキル、ナレッジを、どう組織に横展開していくかもテーマ。

個人間の業績アウトプット、パフォーマンスの差について、結果を出す人から伸びしろがある人への転嫁。社員を引きとどめること、のみならず、せっかくの人材を生かして生産性を高めることこそリテンションの意味があるのです。

2ー3.リテンション施策は採用コスト、離職率の低下の切り札

単純に採用コストの削減は目に見えてわかりやすい結果です。採用に関わる人材紹介手数料、求人媒体コストが下げられるだけでなく、そのための事務コストが大きく、人事部の事務コスト、人件費コストの低減は、企業にとってダイレクトな課題です。

リテンションのやり方、施策はどれがいいのか正解は見つかりにくい。金銭的、非金銭のいずれが良いか。また、どれだけやるのがいいか。やり続けることで、離職率の低下の切り札が見つかるものです。

辞めてしまうと人が足りない、だから採用する、という循環を見直すこと。採用コストをリテンションマネジメントの打ち手に回していく健全な経営をが求められています。

3.リテンションのメリット

3ー1.採用コストの引き下げ

リテンションのメリットでいえば、ダイレクトには離職率低下に伴う採用コストが挙げられます。新卒採用では一人当たり採用コストが100万円以上かかってくることはザラ。

また中途採用では、紹介手数料は想定年収から算定して200万円が中心値で年収が高い人だと一人当たり300万円を超えることも当たり前になってきています。また、紹介会社、求人広告会社に依頼する場合に、人事に人が関わる事務的なコストも発生してしまいます。

これらを鑑み、採用した人がより長く留まって活躍してくれることは企業にとって採用費用全体の支出が抑えられ、コスト面で収益貢献になるのです。

3ー2.育成コストが不要になる

退職者を採用で補完しようとすると、稼働してくれるまでに単純に育成コストが発生します。新卒採用者で言えば、導入研修、現場研修。技術・スキル研修といったものや、中途採用者では、管理職研修、リーダーシップ・マネジメント研修、理念浸透研修といった各種トレーニングは、人材を生かして活躍人材になってもらうには必要となってきます。

また、離職者が出てしまうと、その組織には引き継ぎなどで発生するコストも考えなければなりません。引き継ぎを受ける人の負担や、オーバーフローした業務のそのまた引き継ぎ受け、玉突きで業務の再配分を見直したりと、たった一人でも意外と負荷がかかってくるものです。

3−3.モチベーション向上による生産性・競争力の向上

長期間働いている従業員は、一定程度のモチベーションが維持されていると考えることができます。仮に高いモチベーションが維持されているのなら、モチベーションは、その人の行動・実行につながり、企業の業績に貢献する生産性や競争力の向上につながっていくのです。

モチベーションマネジメントはリテンションに深く関わり密接につながっていますので、経営はモチベーションのコントロールを心がけるために、人事と職場の上長にモチベーションを軸とした要望を出すことが求められます。

3−4.理念・ビジョン浸透、戦略の遂行

四つ目には、経営のMVVの浸透による理念・ビジョン経営がやりやすくなります。理念・ビジョンは、事業推進の根幹をなすものですから、社員の理解レベルによって、現場組織の事業戦略の遂行に大きく影響してきます。

それゆえ理念、ビジョンの浸透は、丁寧にやらなければなりません。全社が集まる機会やキックオフ、社内報で都度、経営から発信をし続ければ、社員への納得度合が高まってくるのです。ただ、退職者が多くなるとそうはいきません。

また入社早々だと理解レベルにばらつきがあります。そういう意味で、経営にとって事業の根幹を支えている理念・ビジョンは、リテンションによって担保され続けるという非常に深い関係があるのです。

4.職場で役立つリテンションマネジメント

4ー1.報酬による効果

職場でリテンションを高めるには、まずは給与報酬です。労働の対価として、金銭面はリテンションに直結していきます。

金銭面では、他に賞与、インセンティブ、ストックオプション、また最近は、社内カフェテリア(無料、金銭補助)、福利厚生プランの充実をしている企業も少なくありません。

ただ、これら金銭的報酬にリテンションに重きを置き頼ってしまうと、「お金を第一に優先する社員」が増えてくる傾向が高くなり、他社に給与条件がいいと目移りしてしまって辞めてしまうことも考えられます。

「お金で入社する人は、お金で逃げられる」ということになりますので、相対的に不満が出ない程度にコントロールをするのがベター。お金だけを重点的に考えてしまうと思わぬ結果を招いてしまいます。

4ー2.やる気、自律性を促す

上記のことから、報酬以外のリテンションマネジメントが今求められています。いわば、従業員とのエンゲージメントをいかに高めていくかということであり、はたらく社員一人ひとりが、自分の存在価値を理解し高め自然とやる気につながり、自律性を高めることで業績への貢献につながっているということです。

これは金銭面以上の意味を持つことにつながり、経営にとっても、上げるだけの給与・報酬負担から切り離すことができるのです。また、やる気を引き出された社員は、他でもない、今の職場でこそ自己実現が可能となり、自ら目標を設定し業績の結果を出してくれるのです。

4ー3.責任と裁量を渡す

与えられた職務をこなす人ばかりでは困ります。将来が予測不能なマーケットで、社員は、自分なりの考えと行動で社会と顧客のニーズに応えていく必要があります。

上司から言われたことだけやっていてもいい時代は過去のもの。今は、自らの裁量で仕事を進めていってもらいたいのです。そういう背景では、上司から「あれこれ」指図されていてはやりにくい。上司にお伺いを立てて承認してもらってだと遅い。

何より、言われた仕事をこなしているだけではつまらないものです。自己決定性を持って自律的に生き生き働いていることがやる気の源泉。それが企業の成長に欠かせません。

4ー4.1on1ミーティングとリテンション

リテンションの結果として、自ら自律的に業績を作っていく従業員が増えていく。その実現ために、上司と部下が対話による時間をとる1on1ミーティングの実施。金銭以外のリテンションマネジメントの一環として、企業が大手企業またベンチャー企業を中心に増えています。

上司と部下と週1回30分程度のコミュニケーションの時間を取って、そこでは、業務の進捗だけでなく、部下が話したいことや今悩んでいることに上司がじっくり耳を傾ける時間を取るのです。

そもそも今の職場で上司と部下ができるだけ本音で、業務進捗以外のことも話ができる機会がある企業が少なすぎると言えます。まずは時間を作ることかがリテンションの第一歩です。

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4ー5.1on1ミーティングでメリットを生む

1on1で時間を取ることは、上司が気付けないことも見えてくるものです。業務が滞って前に進まないボトルネックにアプローチしたり、背中を押してやる気を引き出すことや、逆に部下が聞きたいことを言いやすくする効果もあるのです。

また上司と部下は直接目の前で対話するのですから、顔色や表情がつかめ、マネジメントのしやすさにつながっていきます。

1on1ミーティングを続けることで上司と部下の信頼性が高まり、上司からのエンパワーメント、部下の心理的安全性の確保から、部下は自律的な動きやチャレンジにつなげ、それが生産性を高め、業績貢献の一端を担うことができるのです。

5.リテンションの取り組み、施策、ポイント、やり方と効果とは

5ー1.1on1ミーティングによる取り組み

「上司と部下のコミュニケーションはできている。席は隣だから会話は毎日」といくつもの会社が口に出す言葉。しかし、前や隣に座っているだけで、1on1ミーティングと同じような効果が生まれることはありません。

そもそも1on1ミーティングはどのような形式でしょうか。一般的には「1週間か2週間に1回、30分以上、部下のための定期的な対話の時間」になります。ここでは仕事の進捗や上司が聞きたいことを聞く場ではありません。

上司が部下の自律性が高まるように部下に働きかけ、部下が最大限能力を発揮し業績を果たしていくための時間です。

上司があれこれ叱責しても部下のパフォーマンスが高まらないことは、世の中のマネジメントが示してくれています。前や隣に部下かいるだけで対話が弾むことは決してありません。

5ー2.上司の関わり合いと対応、心構え

リテンションを高めるための1on1ミーティングとはいえ、やみくもにやっていても効果は期待出来ません。まずは上司のスタンスとして、部下の能力開発の場であり、育成であり、キャリアアップ、スキルアップの場として機能させることを前提に置くかどうかでかなり変わってきます。

1on1はあくまで部下のための時間であり、上司の管理という名の業務進捗報告であってはなりません。ましてマイクロマネジメントや詰める管理の場でもありません。

マネジメントを訳して「管理」と認識し、上司は部下をいかに管理するかとなっていては個人の成長促進や自律的な実行ができなくなるばかりでなく、モチベーションが上がらず、間違ったリテンションになってしまいます。心労の負担やそのまま退職者を出してしまうことになるかもしれません。

5ー3.リテンションに効くスキル・キャリア向上支援

リテンションマネジメントの一環として、非金銭的報酬の一つ、社員のキャリアアップやスキルアップをバックアップすることはもはや当然です。

社内の研修、社外のセミナーへの参加機会の提供や金銭的補助、また社外については、時間的余裕を提供するために、働き方改革を実践し、残業を少なくすることや、有給休暇の取得促進、フレックス勤務といった制度の改革も必要となっているのです。

直接のスキルアップにつながりませんが、ボランティア休暇の導入といった長期キャリアパスのバックアップもじわじわですがリテンションに効いてきます。

5ー4.経営者からの発信がリテンション強化になる

事業のベースとなる理念・ビジョンは、従業員が入社するに当たって選社理由の一つとして重要な構成要素としてあげられます。

また業務ミッションの遂行にあたっても、事業や組織の戦略の前提になもなり、さらには従業員それぞれの「われわれは何のために存在し行動しているか」という働く上での基本的な価値観を作っているなくてはならないものなのです。

それゆえ日ごろから、経営者が従業員に情報を発信し、「自社の社会へのあり方、社会や顧客に対する提供したい価値」についての共有をしていく必要があります。

「われわれは何ものか」「会社はいま何を考えているか」。経営者からの発信はマインド面に影響するリテンション強化なのです。

5ー5.経営者からの発信がリテンション強化になる

「辞めさせてもらいます」といきなり部下から言われて戸惑う上司。まったく想定にしていないことが当たり前に起こっています。「最近のメンバーは何考えているかわかならい」と嘆いても仕方ありません。長期に働いてもらえるようするのはどうすればいいか。離職防止に取り組んでいく必要があります。

1on1ミーティングを活用し、職場の人間関係、また仕事のこと、キャリアに対して抱えた不安や、期待とのギャップを拾いに行くことは一つの方法。人事サイドでが従業員満足度アンケートを実施することも一つの手。またキャリア形成の観点から部署異動で対処することもできるのです。

さらに勤怠(出退社時間、残業、有休)を押さえ、過去に退職した人と相似傾向をキャッチすることも必要。現場上司と一体となって打ち手を打つことが求められます。辞めるのは本人のせいにしない、人事、組織の双方が責任を持つのです。

5ー6.コミュニケーションが自然にある職場づくり

「上司と部下による1on1の対話の時間が取られ、部下が安心安全な場にいると感じている。上司が部下の行動支援に徹し、部下が自律的な行動を取っている職場。」そんな職場だとリテンションはうまく機能していくものです。

そのための環境を人事がリードし事業に対して積極的に関わり支援し、実現をしていくのです。現場の上司に任せるだけではうまくいきません。キャリア支援についても、能力開発の視点で打ち手を打たなければ、長期的には従業員の離脱を産んでしまいかねません。

また、制度上でも、ワークライフバランスの実現、働き方改革で導入されつつあるテレワーク、在宅勤務の設計、年次有給休暇の取得奨励を作り、従業員が毎日生き生きと働ける職場を設計していくことが求められています。

この記事の監修者

大和直紀
大阪市立大学(現大阪公立大学)経済学部卒業 株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。人材事業の営業、商品企画、制作に従事。38歳でリクルートを早期定年退職。その後スタートアップ、ベンチャー企業の執行役員、取締役として主に組織・人材開発の領域に従事。
2016年からエグゼクティブ向けコーチングをスタート。現在、経営者・幹部クラス向けコーチングを複数社に提供。また20代の若手クラスを対象には寄り添うコーチ役でいる。コーチング実績、累計約1,700時間、120人以上。コーチング、1on1ミーティングサイト「ペイサー」を運営。

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