1. 1on1は部下のための時間
まず1on1の目的は部下の成長を促すため部下の思考を整理する時間です。1on1における主役は部下であり、決して上司が業務進捗を確認する場ではないことが前提です。
このような認識に立たないと「ところで、あの件どうなった?」といった仕事の進み具合を追求チェックする場と化してしまいます。
「部下のための時間」。大前提のマインドセットが上司にできているかがまずは大きなポイントです。
これがないと、いくら「傾聴」「あいづち」とかコーチングの表面的なテクニックを取り繕っても、部下は心を開いてくれません。
むしろ、1on1を苦痛、憂鬱に感じ、この時間をできる限り最小限にするように言葉で取り繕ってしまいます。
「今日は特にありません」「大丈夫です」「はい、頑張ります」こういった言葉が出てきて、早く切り上げたそうな素振りを見せてきらたその兆しかもしれません。
上司のイヤな側面が、部下の1on1嫌いに直結してしまいかねません。行き着くところは上司嫌いになるということです。
まずは1on1を「部下の成長、そのための部下の『思考の整理』の時間」の位置付けだと思ってください。
2.部下が「1on1が嫌い、苦痛、憂鬱、したくない」、と感じさせる上司のタイプ
各社に導入されている1on1。あなたの部下がなぜ1on1が嫌いになるのか。
そこには、ほとんどの場合上司の1on1が原因です。
部下が1on1嫌いになると、上司も1on1を時間の無駄と思ってしまい上司も1on1を面倒だと思ってしまいます。
バッドサイクルになって、上司部下ともお互いそれぞれ1on1を遠ざける結果になってしまうのです。
今回はありがちな、「よくない上司の1on1」にスポットを当てて述べてみます。
2ー1.1on1のほとんどが「詰め会」「説教」になっている
できなかったことのを挙げて原因追及ばかりになっていませんか。
- 「なぜやっていないの(ですか)?」
- 「なぜできないの(ですか)?」
- 「はぁーっ」(ため息)
- 「ちゃんとやって(ください)」
(※最近はパワハラになるので言葉遣いは丁寧に使う)
もちろんやっていなかった部下にも課題はあります。ただ、過去の事実をいくら追求しても時間は取り戻せません。
理由をいくら聞き出しても、それは過去のことなので今からどうすることもできません。
たとえ過去の部下の言い訳を聞けたとしても上司は納得することがありませんから、むしろ逆にイライラ・怒り(?)が増すばかりでしょう。
そうなるとお互いにとってもはや健全な1on1でなくなっているのです。
上司の1on1のアプローチは過去対話でなくて、未来対話=「これからどうしていく?」というスタイルでやるのがいいでしょう。
過去の経験を踏まえ学びに変えて、未来をどうよくするのか。どういう行動をしていくのかにスポットを当ててみるのがいいでしょう。
2ー2.部下の話を聞かずに自分の意見を押し付ける
上司の方は自分の考えややり方、スタイルはすべて正解だと思っていませんか。
- 「どうしてこうしないの?」
- 「それではうまくいかない。こうしないと」
- 「まずこれから始めないと。次はこう」
新人や入社してきたばかりの中途採用の部下には、やり方を教える期間が必要ですから事細かくあれこれ指示が必要でしょう。
ただ、入社後の時間が経過してもなお上司がやり方を事細かく指示していたら、部下はそれに安易に従うことが当たり前になり、自分はどうしたいのか何も考えなくなってしまいます。
そうなると、
- 言われた通りにやっていればいい。結果悪くても自分のせいじゃない
- 自分で考えるのはタイパは悪い。だったら言われたその通りにやろう
- (逆に)言われたこと以上は無駄だからやらない
と、受け身人材になることを上司が促していることにもなりかねません。こうなってしまうと将来への成長期待は望むべくもありません。
そうならないためには上司の意見や考えの押し付けは最低限に封印してください。
部下に対しては、「あなたはどう考えていますか?」と部下の考えや判断を聞き出す対話に変えてください。
上司ぶって自分の意見を決して押し付けないことです。
いくら「さすがですね。なるほどやってみます。確かにそうですね」と相槌を打たれても、それは上司であるあなたにこの場限りで取り繕っている過ぎません。
面倒な上司との時間を最小限にして1on1が早く終わるくらいにしか考えていないのです。
2ー3.「自分のこと(自慢、武勇伝)」ばかりを話す
自分の成功事例を話す場と思っていませんか。
- 「オレはこうした。こう思う」
- 「これしたからうまくいった」
上司の目に映っている現象すべてを部下ができていない現象に当てはめて、自分をトレースさせれば結果が出るなんてもはや妄想にしか過ぎません。
部下や顧客のニーズ、時代環境の背景は数年前とは変わっています。
競合は出ている、顧客の目線も高まって、そもそも部下は上司の丸写しでは同じように生きてきたわけではありません。
寸分違わず、同じように部下ができるなんてありえません。
そうなると上司のやり方はできていない部下との差でしかなく、単なる押し付けや説教にしかなりません。
こういったことをを理解して、自分の事例を参考程度に出すくらいに留めてください。
- 「そうなのですか!」
- 「すごい、やってみます!」
と言ってくれますが、それはあくまで上司である肩書きを忖度したまでです。部下の知恵が上司のご機嫌取りに使われていると冷静に思った方がいいでしょう。
上司は話を部下にできると「スッキリした、1on1がいい時間だった」と上司の方は思えるもの。
(こうなるとさらにタチが悪いのですが)1on1はあくまで「部下の思考の整理の時間」にできたかどうかです。
部下にとって1on1がどういう時間になったかが、1on1が有効だったかの判断軸です。
上司は自分の成功物語を絶対化したり脳天気に話をしないこと。
自慢話に終わって部下が使えることはほぼ0(ゼロ)。
部下の成長にこれっぽっちも役に立たないと思ってください。
2ー4.否定だけして次のアクションが見えずに終わる
ダメ出しの場になっていませんか。
- 「それ、やっても意味ないよ」
- 「会社の決まりだからできない」
部下がやったこと、これからやろうとすること。そこには部下の思いがあるはずですが、上司は何の気なしに否定をしてしまいがちです。
上司は過去の経験からそう言っているのでしょうが、部下がせっかくチャレンジをしようという気になっていることを否定してしまっては何ごとも前に進みません。むしろ、否定されたことで意気消沈し、やる気がなくなることもあります。
今後も、「意見を出せば否定される」と何も言わない方がダメージが少なくなると自己防衛し、対話すら否定的に思ってしまいます。
そうならないためにも、まずは部下の意見や思いを肯定から入って、そこにどんな意図があるのかを受けてめてみてください。
つい上司は言いたくなる衝動がありますが、ぐっとこらえることが1on1の場では重要なのです。
2ー5.上司が片手間感でやっている
仕方なく義務だからやっている感が出ていませんか。
たとえば、1on1の日時変更、優先順位が高くないと判断してしょっちゅう変更を行っていませんか。
もちろん急に予定が入ることがありますが、1on1の時間を優先しどれだけ大切にしているのかは相手の部下のことをどれだけ考えているのかに比例しています。
部下はこういったことに敏感で「自分の時間を変更させられた。今回でリスケ2回目、、。あーあ」と脳裏に焼き付くもの、とても悲しく思っているのです。
また1on1の実施時間内でも上司が以下の態度だったらどうでしょうか。
- スマホ、パソコン打ちながら1on1
- 聴いているのかいないのかわからない1on1
- 次の予定を気にしながらの1on1
たしかに上司は忙しくて、部下からは「忙しい中ありがとうございます」と言われるので、つい自分に甘くなって「わざわざ時間取ってあげているんだから時間変更も、パソコンカチカチも部下はわかってくれる」と思ってしまいがち。
ただこんなスタンスで上司が1on1をやっていると部下はどう思うでしょうか。
パソコンをカタカタメール、チャットしながら自分と1on1をしていると感じると部下はげんなりしますよね。
悪気がなくてもチラチラ時計を見たりとかでも気になりものです。
最悪なのはスタートしてから1回も目も合わさずに1on1が終了したとなるとこれはもってのほかです。
そうならないためにも、時間の設定は前後の会議を含め余裕を持って。1on1中は、気がどこかに行かないようにしっかり対話してください。メモのつもりでパソコンをカタカタする時も、「ちょっとメモ取らせてね」といった相手への配慮をしたいものです。
3.部下との1on1を有意義な時間にするためのポイント、秘策
部下が1on1嫌いになるのはなんとなくわかってきたと思います。
部下の1on1キライは、たとえ上司の自分が問題を作ってしまってもそのつけが回って、上司も同じように1on1キライになってしまうバッドサイクルになるのです。
では明日からどう望むといいのか。「せっかく1on1の研修を受けたのに」「1on1スキルが身についていないと思われたくない」といったことはありますがスキルはもちろんのこと、基本は1on1は「部下のための時間」と真剣に思える力をどれだけ持てるかどうかです。
テクニック・スキルよりもむしろ、スタンス、態度の方が大切と思ってください。
「当たり前のことを今さら」とわかっているかも知れませんが1on1の場面ではなかなかできるものではないのです。
頭でわかっても上司は一方で業績成果を出さないといけないし、安心したいから日々細かく管理したい性質が1on1を複雑にしているのです。
業務が滞りなくできているか、うまくやっているかチェックしたいことを優先して部下にはつい「これどうなった! なぜ!」と言ってしまうのです。
となると上司の事情を汲んだ部下からは自分の話など後回しにして「この件ですが、、、」とまさに業務の進捗確認・報告ばかりになるです。
1on1は「部下のための時間」とはいったい何でしょうか?
上司が聞きたいことに費やす時間ではありません。部下が忖度して「上司が聞きたいであろうこと」を部下に言わせてしまうことでもありません。
部下が本当に言いたい、伝えたいことを言うことができる場になっているか。
これが1on1が嫌いにならない、効果が高まる「部下のための時間」の第一歩なのです。
3ー1.問いかけることを基本にする
相手が言いたいことを聞いているか、相手に気づきを与えることを言えているか。それができていないと対話と言えずに部下と向き合えてないことになります。
上から目線でかぶせるのではなく、いかに腹落ちさせるかが鍵です。
部下がどこまで心を開いてくれているかのサインは、話す内容をチェックしてください。心が塞がっていると、事実、肯定、否定しか言いません。
「(事実のみ)これです」
「はい、いいえ」という単純フレーズの回答。
心が開いてくると「こう思います、こうしたい」といった自分の意見や、意志、思いや感情を話してくれます。
1on1はまず部下に話をしたいテーマを出してもらうことから始めます。決して上司が聞きたいことを出す場ではありません。
(業務の進捗報告は別テーブルで実施)
事前にメールで知らせてもらうか、その場で決めてもかまいません。
業務で抱えている悩みや不安、困りごと、長期ではキャリアについて、といった話題が中心になるでしょう。
3ー2.部下の話したいことを口に出してもらう(自分の考え、答えは封印)
何を話したらいいか、部下が迷っているなら、呼び水として差し向けるも一つの手としてお伝えをしておきます。
たとえば、上司に忖度して、業務報告、相談という名目であっさりした時間にいつもなっているのなら、「いったんそれは横に置いておこう」という提案。
目の前の業務ばかりでなく少し中期的長期的、キャリア、学びたいこと、チャレンジしてみたいことを次は聞かせてもらえないかという具合です。
内容や、話の流れ、組み立て、スピードはもちろん部下次第で。
上司はつい「まどろっこしい。結論から言ってくれ」「端的に話ができないのか」「何言いたいの」と言いがちです。
部下が思考を高めてじっくり考えていることを望んでいるなら部下のペースに合わせてください。
あくまで部下次第で。掻き乱すと部下の思考は決して高まりません。
あれやこれやそこで指示命令が飛んできたら、部下のやりたいことや自己決定性が高まらず「だったら上司の言うことをやるだけ」となりかねません。
決して、上司の方から、「ところであの件、今どうなっているの?」なんてことは言わないように心がけてください。
上司の満足度を高める場でないことを心してください。
3ー3.思いの背景を想像する
「うーん。そうですね」と思考の整理や、考えることを部下は1on1でしていますか。
実はこの「うーん、、、。」が思考を高めるヒントになるサインで、何かの思いが背景、裏側に隠されていることがあるのです。
言葉に出しにくい、言葉にしにくい感情が織り混ざって「うーん」となっていることがありますのでこのワードが出てきたら深く探ってみるといいでしょう。
ただこのサインはなかなかわかりにくく部下と向き合えてないとキャッチができずにスルーしてしまうことがしばしば。
上司が聞きたいことを優先している姿勢だと、聞きたい事実にフォーカスされますから部下の思考が高まっているサインは見えてきません。
「何を今思ったのかな?」と思う上司の力は「部下のための時間」だとどれだけ思えっているかの表れです。
部下にどれだけ「成長の機会」を持ってもらいたいかのバロメータと言えるのです。
頭でわかっているけどできないと言っている上司は、1on1を「部下のための時間」と本当は思っていないのかもしれません。
3ー4.評価の場にしない
そもそも部下は自分ができてないと思われたくないものです。
「役に立たない」「できない」「やっかいと思われる」のを避けるため、上司との話す場では仕事上の体面を取り繕うものと考えてください。
そういう意味で、部下は1on1では部下は無難に過ごして上司のツッコミ、詰めがいかに少なくなるかを考えているものと思うのがいいでしょう。
部下はそれくらい1on1を緊張感がある場と認識して臨んでいるので、部下が1on1で話す内容について上司は部下の評価を下さないようにすることがポイントです。
特に評価を下げる発言、ダメ出しです。
ダメ出しは今後、ネガティブな話をするのは避けよう、相談はダメ部下と烙印を押されるからしてはいけないとなってしまいますから封印ということですね。
過去は変えられません、変えられるのは未来だけですから、いい方向に変えられるような話の進め方をすることにしてください。ダメ出しをするのではなく、どうやったらうまくいくかを問い立ててみると流れが好転してくるでしょう。
4.部下が1on1が嫌いになる前に「プロ」に相談を
ここまで1on1が苦手になる部下の気持ちを代弁し説明をしてきました。いかがでしょうか?思い当たる節が少しでもあって参考になれば幸いです。
上司が1on1をすると、どうしても業績が気になり、部下のできていないところに目が向いてしまうのはやむをえません。上司は自分がやってきたことと今の部下を比較してしまい「なぜこんなこともできないのだろう…」と思ってしまうものです。
しかし、部下が1on1を嫌いになるということは、1on1を実施する側(管理職)のマネジメントのやり方そのものが問題な場合もあるのです。
特に、「自分はマネジメントスキルがそもそも足りていないのではないか?」「先輩の管理職の人はどんなことを意識してるんだろう?」などのように、テクニックに走りすぎている場合は要注意です。テクニックを知りたがるときほど、マネジメントはうまくいかないものです。
そんな方は、当社・ペイサーの「コーチングサービス」を通して、まずご自身の管理職としてのマネジメントのあり方を見つめ直してみてはいかがでしょう?
ご自身のマネジメントがどんなふうにうまくいっていないか?、1on1を通じてどんなふうにしていきたいか?などを、プロコーチにお聞かせください。そして、プロコーチと一緒にマネジメントのあり方について考えてみませんか?
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