1.クリニック院長|医師・歯科医が直面する「経営の壁」
医師・歯科医としてのキャリアを積み、院長・理事長として組織を率いる立場になったとき、多くの方が「誰も教えてくれなかった領域」にぶつかります。
コーチングの現場で、クリニック経営者から頻繁に聞かれる課題は大きく4つです
① 「医師・歯科医」と「経営者」の二重役割の重さ
診療をしながら、スタッフマネジメント・採用・財務・設備投資・診療報酬改定への対応——これらをすべて同時にこなさなければなりません。「患者さんのために集中したいのに、経営のことが頭を離れない」という状態が続くと、どちらも中途半端になる危険があります
② スタッフとのコミュニケーションギャップ
医師・歯科医、看護師・歯科衛生士、事務スタッフ——職種ごとに文化・価値観・言語が異なります。「伝えているつもりなのに伝わらない」「なぜ動いてくれないのかわからない」という感覚を持つ院長は少なくありません。特に連携室や事務部門との情報共有は、医療の質にも直結する重要な課題です
③ MVV(理念・ビジョン・行動指針)の形骸化
「理念は作った。でも、スタッフの日常行動に結びついていない」というケースは非常に多い。文言としてのMVVではなく、組織の血肉になるMVVをどう育てるか——これは、院長が一人で考えても答えは出ません。リーダーやスタッフとの対話を通じて、はじめて「生きた理念」が生まれます
④ 院長の「孤独」と意思決定の重さ
最終的な判断を下すのは、常に院長・理事長です。しかし、その判断を率直に相談できる相手は、組織の中にはなかなかいません。「これでいいのか」という迷いを一人で抱え続けることが、意思決定の質と院長自身のパフォーマンスに影響します
2.医療現場に特有の組織マネジメントの難しさ
クリニック・医療法人の組織マネジメントには、一般企業とは異なる固有の難しさがあります
「職人」文化と組織化の摩擦
医師・歯科医・看護師・歯科衛生士は、それぞれ高度な専門職です。「個人の技術と判断」を軸にしてきたプロフェッショナルたちを、どう組織として束ねるか。「マネージャーを置く」「目標設定を導入する」——こうした一般的な経営手法が、医療現場ではすんなり受け入れられないことがあります
外部環境の変化への対応(診療報酬改定など)
診療報酬改定、医療制度の変化、地域医療ニーズのシフト——クリニック経営者は、臨床の専門性を維持しながら、こうした外部変化への戦略的対応も求められます。「今年度、どこに注力するか」「強化すべき診療領域はどこか」——これらは、内側だけを見ていては答えが出ない問いです
「先生」という立場が生む対話の非対称性
スタッフにとって、院長は「先生」です。この関係性は、心理的安全性の低下を生みやすい。「院長には本音を言いにくい」「指摘しにくい」——こうした空気が組織に蔓延すると、問題が見えにくくなり、気づいたときには深刻な状態になっていることがあります
3.コーチングが院長・理事長にもたらす変化
コーチングは、答えを外から与えるのではなく、院長自身の中にある認識・判断・価値観を引き出すプロセスです。医療機関のリーダーが抱える課題は、まさにこのアプローチがフィットします
「経営者としての自分」を言語化する場
コーチとの対話を通じて、「自分はどんな医療を提供したいのか」「どんな組織にしたいのか」「何のために経営しているのか」を言語化します。この作業は、MVV策定の基盤にもなり、スタッフへの発信の一貫性を生みます
「孤独な判断」を整理する安全な場
評価も批判もない場で、今直面している課題を言葉にする。「これでいいのか」という迷いを声に出すだけで、思考が整理されることがあります。コーチは答えを与えるのではなく、院長自身が自分の答えにたどり着けるよう、問いを通じて伴走します
組織への働きかけ方が変わる
コーチングを重ねる中で、「なぜスタッフが動かないのか」という問いが「自分はスタッフにどう働きかけているのか」という問いに変わります。この視点の転換が、コミュニケーションスタイルの変化につながり、組織全体の動き方が少しずつ変わっていきます
4.ペイサーの支援事例:院長・理事長の変化のプロセス
ペイサーが継続支援しているクライアントの事例(個人情報は非公開)から、変化のパターンをご紹介します
事例①:歯科医院長(継続7年)
先代から医院を引き継いだ院長。就任当初は、医師・歯科衛生士・スタッフがそれぞれの役割で動いているものの、組織としての一体感が未整備で、また院長として「どこに向かうのか」を示す言葉を持てずにいました。
コーチングを通じて、まず「自分が大切にしたい医療」を言語化。そこから組織の理念・ビジョン・価値観(MVV)の言語化へと進み、それを実現する組織構造として、マネージャー職を設置しました。さらに、個々のスタッフが成長実感を得られるよう、目標設定の仕組みを導入するプロセスが進行中です。
診療報酬改定への対応や、予防歯科・歯科衛生士領域への戦略的な注力についても、セッションの中で年度ごとのゴールとして整理しています。7年という長期にわたる伴走の中で、「院長としての軸」が着実に育ってきています。
事例②:在宅医療クリニック院長(継続3年)
大学病院で救急医として10年以上のキャリアを積んだ後、地域医療を担う機能強化型在宅療養支援診療所を設立した医師。「誰もが医療から取り残されないようにしたい」という強い使命感を持つ一方で、走り続けていたゆえに、事務スタッフ、サポートスタッフとのコミュニケーション不足や、組織としての行動指針の未整備に課題を感じていました。
「医師としての私」と「経営者としての私」の間で葛藤しながら、組織をどう動かすかに孤独を感じていた時期が続きました。コーチングでは、その孤独と向き合いながら、「どんな組織にしたいか」「誰と、どのように作っていくか」を対話の中で整理。文言だけのMVVではなく、理事・リーダーとの対話を通じて「生きた行動指針」を育てていくプロセスを、コーチとともに歩んでいます。
どちらの事例にも共通するのは、「正解を教えてもらう」のではなく、「自分の中にある答えを、対話の中で見つけていく」というプロセスが変化の核心にある、ということです
5.コーチングを選ぶ際のポイント(医療機関のリーダー向け)
クリニック院長・理事長がコーチングを受ける場合、コーチ選びは特に重要です。医療現場の固有性を理解した上で伴走できるかどうかが、継続の質を左右します。
- 医療・医院経営の文脈を理解して対話できるか
- 「臨床の専門家」と「経営者」の二重役割への理解があるか
- 守秘義務が明確で、心理的安全性が確保されているか
- MVV策定・組織設計など、経営テーマも扱った経験があるか
- 長期伴走(6ヶ月〜数年)に対応できるか
- 初回トライアルで「この人と話すと整理される」という感覚を確認できるか
エグゼクティブコーチングの詳細については、こちらの記事もご参照ください。
6.まとめ:院長・理事長の「孤独な経営」を、対話で前進させる
この記事のポイントを整理します。
- クリニック院長・歯科医は、「臨床のプロ」として訓練されてきた一方で、「経営者・マネージャー」としての訓練機会はほとんどない
- スタッフとのコミュニケーションギャップ・MVVの形骸化・孤独な意思決定は、医療機関に特有の構造的課題
- コーチングは「答えを外から与える」のではなく、院長自身の中にある認識・価値観・判断を引き出すプロセス
- 変化の本質は「自分はどんな医療組織を作りたいのか」という問いへの答えを、対話の中で育てていくこと
- 長期にわたる伴走が、臨床と経営の両立を支える
「まず一度、話してみたい」という方は、ぜひトライアルセッションからお試しください。何を話すか決まっていなくて大丈夫です。
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