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人材育成と1on1ミーティング

人材育成・人材開発とは、企業がビジョン、戦略を継続的に実現し達成するために、体系的に考えられた人材への育成の取り組みすべてのことを指します。

ビジネス環境は変化のスピードが速く、マーケットは日々大きく変わっています。企業が持続的に競争優位性を発揮し続けるには、社内の人材をよりスピーディーに「育成、活躍」させ、持てる「能力を最大に引き出し」ていかなければなりません。

いつ何どき、不測の事態が起きようとも、勝ち残っていくには源泉は人材。それゆえ、人材育成は、企業に取り巻く経営課題の中で、優先順位が極めて高い取り組みであり、置かれている環境によって内容をチューニングさせていかなけれなりません。

経営ビジョンから紐解いた経営戦略、その下での人材戦略。人材育成・人材開発はまさに今後の経営を左右する経営直結の課題といえるのです。

目次

1.人材育成とは

1ー1.人材育成の目的

この時代を価値の残るためには経営者が優秀であることはもちろん、事業を引っ張っていく幹部や現場の社員一人ひとりが戦力化していないと成り立ちません。たとえ新人や中途採用者であっても、採用後は職場に慣れるのはもちろん、パフォーマンスを発揮してもらえる人材になってもらいことを期待しています。

人材育成の目的は、採用後できるだけ早いうちに業績貢献(売上・利益創出=結果を出す)をしてくれる人材になってもらいたいことが第一なのです。

1ー2.人材育成の内容

大きくは、新人若手、中堅、管理職、事業責任・上級職に分けて考えられます。

新人若手の場合は、ビジネスマナーや社会人としての行動規範、また自社の商品・サービス、社内の仕組みを身につけること、仕事に向かうスタンス、コミュニケーションに関わる育成から始まります。

中堅社員の育成は、知識、スキルを高め、より業務に実践活用できるものになります。

管理職の育成では、管理職に求められる要件である、組織業績責任と人材育成について育成することになります。

事業責任・上級職には、事業や経営についての考え方、ビジョン、経営戦略、その遂行。また財務面、投資判断についてのより実践的な場が設けられるのです。各階層ごとに、よりパフォーマスが発揮できるような工夫が各社の事情に合わせて組み立てられているのです。

1ー3.人材育成の課題と1on1

育成についてどのやり方が効果的かは、受け入れる人材のレベルによって違ってきます。ありがちなのは、育成を「メニューをこなす」ことに集中し、そもそもの目的や、内容をあまり精査していないケース。

極端な例では、OJTの名のもと上司が飲み会に誘って部下に訓示をするといったものは、上司のストレス発散にしかすぎず、部下にとっては育成どころか苦痛でしかありません。定期的な評価面談の場(1年に1回程度)や、集合研修、OJTを実施しているので十分だと感じている場合もあるくらいです。

すべてではありませんが集合研修では、研修を受けた日は気持ちが高ぶり満足度が上がる傾向がありますが、翌日からは日常に戻ってしまい効果の継続性に課題があります。

OJTに至っては、育成どころか上司のマネジメント放棄になっているケースが少なくありません。上司が部下に仕事を投げて「単純なこなし仕事」になっているケースすらあります。

本当に部下の育成になっているのか。そんな背景から上司が部下一人ひとりに向き合い、部下の育成に定期的(週一程度:30分)に時間を取る(30分)1対1の1on1ミーティングが部下育成の一つとして重要視されているのです。

2.人材育成と1on1スキル

2ー1.人材育成とコーチング

上司のマネジメントとは、部下の業務管理を通じて、部下の業績を達成させることが挙げられます。上司は部下の思考と行動支援を行いながら、目標達成に導く責任が重要なミッションになるのです。

手取り足取り1から10まで伝えて部下を動かすのは数ヶ月の単位ならできるかもしれませんが、上司がすべて把握し思うままにロボットのように動かすことは不可能です。

部下自身がどういうやり方で、どうしていきたいのか。コーチングのアプローチを使い、上司の問いかけによって、部下自らが言葉を発することによって、自分でやってみたい行動を決断し、実行する支援が必要なのです。

部下は誰かに言われただけやっているのでは長続きしません。モチベーションを高め、部下に自律的になってもらいたいとの期待から、人材育成とコーチングが深く結びついた1on1ミーティングが人材育成の定番として今や当たり前に各社で行われているのです。

2ー2.人材育成とティーチング

ティーチングは、teachの言葉の通り上司が部下に指示命令を出し、「こうしなさい。ああしなさい」と細かい所まで教え実行させることにあります。仕事の品質を一定レベル高め成果を出すことができるので、業績責任がある上司にとっては結果が見通せて安心できるのです。

新人や若手には経験値が少ない有効な人材育成となりますが関わる上司にとっては時間が取られます。またその指示を出す上司以上の成果は部下は出せませんので、関わる上司によってばらつきもあります。

また部下にとっては、考えることを放棄しいつまでたっても主体性が高まりませんし、自己決定性がありませんので部下は仕事がつまらなくなります。

短期業績を作るには有効的に機能すると言えますが、長期的に自立した人材を育成する上ではあまりお勧めできません。本人の動機付けが高まらず、離職に至るケースも少なくありません。

2ー3.人材育成とフィードバック

上司は、部下の仕事や弱みについて、直接耳の痛いことはあまり言えないものです。改正労働施策総合推進法の施行によりハラスメントにつながると上司が過剰に反応しマイルドに言葉を濁して言うので、部下にとって何も効果的な変化や改善につながりません。

定期的なフィードバックの場を設けることは人材育成の観点からは必要で、部下の仕事の行動や取り組みが上司に「どう映っているか」をしっかり伝えることはますます重視されています。

ただしフィードバックを叱るだけの場や、上司のストレス発散の場にしてはいけません。また結果の事実についてとやかく言っても過去はさかのぼることはできません。

結果をもたらした部下の「行動や取り組み」に対して上司にどう映っっているかを伝えることが正しいフィードバックになります。あくまで部下の立て直しになるようにすることが求められるのです。

2ー4.人材育成と1on1ミーティング

人材育成には、現場でのOJTや人事が主体となってする社内研修、あるいは研修会社の仕立てるプログラムを対象者が受講するスタイルが一般的です。ただこのようなスタイルでは、対象者となるメンバーには、自分の強み弱みを反映した内容ではありませんので、研修そのものは良くても、どこか他人事になって対象者の人材育成に繋がりにくいことがしばしばあります。

そこで注目されるのが、部下の育成と部下の主体性を引き出し、動機付けを高め業績につなげる上司と部下の定期的な対話の「1on1ミーティング」。そこでは目の前の業務にフォーカスするのではなく、上司は中期的な育成の観点で部下の目指す姿に近づけるように支援するのが目的です。効果が高く、上司のマネジメント力も自ずと高まっていくとして1on1を導入する企業が増えているのです。

3.人材育成の対象

3ー1.新人育成とモチベーション向上のための1on1

新人育成では、1on1の内容はティーチングに注力したやり方がフィット感が高い。というのも人材育成の対象者が新人ですので土台ができていません。また、仕事上で判断する情報の絶対量が彼らには不足しているので、「どうしたいか」の情報すら持ち合わせていないケースがあります。

「何を、どうするか」の「What、How」について、まずは上司はある程度の情報を提供し、また知識やスキルの提供もしながら、しっかり指示を与えることが求められます。

ただ本人の立て直しの目的もこの1on1で高めることが求められますので、「あれこれ」指示を出しすぎて動機付けが下がるのは良くありません。自己決定性、自己有能性、社会的承認性といった内発的動機づけを高める関わりをするのがいいと上司は意識しておくといいでしょう。

3ー2.中堅育成の経験学習サイクルと1on1

マネジャー手前の中堅社員の育成は、企業にとって一番のボリュームゾーンではないでしょうか。この中堅層はある一定の知識やスキル、スタンスがついてきていると思われますが、強み弱みもそれぞれ個人で異なっていると思われます。

よって個々別に、一人ひとりのどの強みを引き出すか、また弱みはどうしていくか、日々の行動を通し、成功体験を積ませながらより結果を出せる人材に育てなけれななりません。

そこで上司は、部下それぞれに1on1をしていくことが効果的です。1on1のシーンでは経験学習のサイクルをまわすことが有効で、プロセスである「経験→省察→概念化→実践」を上司の支援をもとに行うのが成長の助けになっていきます。

失敗や成功を通して意味付けし、自分が次に確実にできるようにする。自分がやるからこそ、意欲が高まり自信がつく。繰り返して業績になる。研修やOJTだけでは難しいことも、1on1ミーティングなら個人一人ひとりにそった育成がきめ細かくできるのです。

3−3.管理職・マネジャー育成のための1on1

管理職・マネジャーになって役割が全うできるかといえばそうはいきません。メンバー時代に業績を上げた人が、ポジションを一つ上げて管理職・マネジャーになるケースが多く、プレイヤーとしては優種であっても組織の長としてはまだ一歩という人をよく見かけます。

そもそも管理職の仕事をどう捉えているか。おおよそは、「組織の業績目標をきっちり達成させる」責任、そして組織達成ができるように「部下メンバーを育成させる」責任が求められるのです。

その実現に向けて、組織の長である管理職は、そもそも組織をどうしたいか、どんな組織になってメンバーに何を感じてもらいたいかの組織ビジョンを持たないといけません。

ビジョンを明確にし、ゴールを設定し、何を優先させ、どう進むんで行くか。管理職・マネジャーの人材育成は1on1ミーティングの中で、管理職・マネジャーのあり方を見つけてもらう場なのです。

3−4.1on1ミーティングによる上司の関わり方

上司が自分の部下の人材育成の責任があるとと言われてもどうしていいのか。自分も上司から育成をしてもらった記憶がないという人にとっては悩ましいテーマです。一通りのOJTや研修を仕立てることくらいはできますが、それだけやってもなかなか育ちません。

メンバーの弱み強みを捉えた上で、上司の押し付けでないメンバーのための時間として1on1ミーティングをすることが有効です。

上司の聞きたい業務進捗でなく、部下がどうすれば業績を高めるか。上司は部下のやる気を出すことに注力することがまずは優先、そして結果を生み出していくのです。

結局は、一人ひとりに向き合って、強みを理解し引き出し、やりたいことを業務に接続させてモチベーションを高めていくことが人材育成の近道と言えるのです。

3−5.人材育成における1on1ミーティングの目的

経営と現場との結節点になる管理職は、事業の推進にかなりの影響をもたらし、管理職が機能している企業は、事業の強みを発揮でき、長期的に売上・利益を創出しているのです。

管理職の役割の中で特に重要視されるのは、業績目標に対する「結果の創出」、そして部下の「人材育成」です。また、その前提となる職場整備も必要で、部下を引きつけて事業を前進させるために、経営の理念やビジョンのメンバーへの落とし込み、目的の認識合わせ、共感作りも必要になってくるのです。

どんな組織・チームを作りたいのか。目標ではなく目的にフォーカスし、目的を見出すことがまずは求められるのです。そうやって上司は、部下のための環境整備をすること、部下の育成が自分の重要なミッションである、という視点を持つことが必要なのです。

 

この記事の監修者

大和直紀
大阪市立大学(現大阪公立大学)経済学部卒業 株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。人材事業の営業、商品企画、制作に従事。38歳でリクルートを早期定年退職。その後スタートアップ、ベンチャー企業の執行役員、取締役として主に組織・人材開発の領域に従事。
2016年からエグゼクティブ向けコーチングをスタート。現在、経営者・幹部クラス向けコーチングを複数社に提供。また20代の若手クラスを対象には寄り添うコーチ役でいる。コーチング実績、累計約1,700時間、120人以上。コーチング、1on1ミーティングサイト「ペイサー」を運営。

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